LGBTQの多様性(音声文章とスライド画像版)
TRP2021 オンライン企画「LGBTQの今を知る15選」
LGBTQの多様性(スライド画像版)
音声「みなさんこんにちは。NPO法人にじいろ学校の今徳と申します。
本日はLGBTQの多様性というテーマについてお話をさせていただきます。よろしくお願い致します。」
音声「まずは、私が所属している団体にじいろ学校についてお話させていただきます。
にじいろ学校は2015年にセクシャルマイノリティが気軽にアクセスできるということを目的に吉祥寺の雑貨店としてスタートしました。
吉祥寺の雑貨店では月に1回セクシャルマイノリティに関する交流会を行っておりました。
こちらの場所は雑貨店というハードルの低さもあり、自分はセクシャルマイノリティか分からないという人や、LGBTに含まれないセクシャリティ当事者の方に多くご利用いただいておりました。
そのことから、もっとセクシャリティに関する活動をやっていきたいという思いで、2016年にNPO法人にじいろ学校を設立致しました。
設立後は当時、支援がなかったり、コミュニティや交流会が少なかったLGBTに含まれないセクシャルマイノリティの中でもパンセクシャル、Xジェンダー、アセクシュアル、まだ悩んでいる方や決めていないという方の交流会を開催していました。
その中でも一番反響のあったアセクシュアルというセクシャルマイノリティの活動を現在メインで行っております。」
音声「東京レインボープライドさんの方では2016年から4度に渡りパレードでのフロート、ブースの出展、またレインボーウィークでのイベントの参加などをさせていただいております。」
音声「続いて今回お話させていただくテーマについてです。
まず1つ目、 L/G/B/T以外のセクシャルマイノリティについて
2つ目、 他者に恋愛的/性的に惹かれない「アロマンティック/アセクシュアル」について
3つ目、 LGBTQコミュニティについて
以上3つのテーマでお話させていただきたいと思います。よろしくお願い致します。」
音声「まずは、L/G/B/T以外のセクシャルマイノリティの割合についてです。
こちらは2020年に行われた調査の結果です。こちらの調査から数値の差ということではなく、LGBTQの中にはL/G/B/Tだけではなく、様々なセクシャリティを自認している人がいることをぜひ知っていただきたいです。」
音声「そしてこちらは、それそれのセクシャリティを聞いたことがあるか、意味を知っているかの回答になります。
LGBTは言葉を聞いたことがある人がどれも90%を超えています。これはLGBTに関わる活動を行っている方や、当事者の方が今まで必死で声を上げて下さった結果だと思います。本当に感謝尊敬しております。
ただ、一方でLGBT以外のセクシャルマイノリティについては聞いたことがない人が、ほぼ70%以上超えと、まだまだ知られていないことが分かります。
ただ、認知度を上げればいいということではありませんが、現在何で周りと違うんだろうと悩んでいる方にこういうセクシャリティがあるよと、あなただけじゃないんだよと届けるためにセクシャルマイノリティの認知度を上げることは一つ大切な一歩だと思います。」
音声「続いて、セクシャリティの定義についてです。
こちらは、LGBT以外のセクシャルマイノリティとして語られることが多いセクシャリティになります。なお、定義や表記については個人や団体によって使っている定義や表記が違ったり時代によって変わっていくということもございます。こちらは、あくまで現在、にじいろ学校が使用している定義になりますのでご了承下さい。
まずは、Xジェンダー、こちらは、性自認が男女どちらかだけに当てはまらない人を指します。
パンセクシャル、全ての性別に恋愛、性的に惹かれる人を指します。
アセクシュアル、こちらはAセクシャル、Aセクシュアルなどと表記することもありますが、いずれも同じ意味になります。こちらは、他者に性的に惹かれない人を指します。
クエスチョニング、こちらは性自認または、恋愛指向、性的指向等が決まっていない、または、決めていない人を指す言葉です。
もちろんこれらだけでなく、他にも多くのセクシャルマイノリティが存在します。」
音声「続いて、性自認の多様性についてお話させていただきます。
こちらの表は、アロマンティック/アセクシュアル・スペクトラム調査2020の調査において、【出生時の性別と、現在自分が捉えている性別が「一致」していると思いますか】という設問に対して、「思わない」「わからない」を選択した人の現在自分の性別をどのように捉えていますかという質問に対する回答をあらわした表になります。
こちらの調査の回答が現在、エックスジェンダーやトランスジェンダーを自認している方に限っていないことや、アロマンティック/アセクシュアル・スペクトラム調査という一部コミュニティ向けの回答のため、この数値は一般化できないものであると考えられますが、ここから自己の性別の捉え方も多様であると推察できると思います。」
音声「続いて、DSDs(体の性の様々な発達)についてお話させていただきます。
DSDsとは、体の性の発達が、「これが男性の体のはず・女性の体のはず」という固定観念とは、生まれつき一部異なる女性・男性の体の状態の総称になります。
なお、性分化疾患やインターセックスという用語は両方とも「男でも女でもない」という偏見が強いため、現在ではDSDs(体の性の様々な発達)と呼ばれることが多くなっております。」
音声「DSDsとは、セクシャルマイノリティとは異なるものになりますが、「LGBTQI」という表記の問題点についてお話させて頂きたく今回ご紹介させていただきました。
LGBTQと「インターセックス」の頭文字である「I」を合わせた表記、「LGBTQI」も存在していますが、「LGBTQ」と「DSDs」は異なるものであるため、「LGBTQI」という表記ではDSDsもLGBTQと同じセクシャルマイノリティの一種であると誤解を生む可能性があるため、使用を避ける必要があります。
また、インタセックスという言葉もLGBTQではよく耳にする言葉かと思いますが、こちらの言葉も、当事者の間ではあまり使われておらず、いい印象を与える言葉ではない、誤解や偏見をうみやすい言葉であることから、あまり使用されないことを望む当事者の声が多いです。
「DSDs」は性自認や恋愛、性的指向とは関係ないためセクシャルマイノリティには含まれませんが、DSDsの人々の中にもLGBTQの人はいるということ、また性自認や恋愛性的指向だけでなく、男性にも女性にも生まれつき体つきの性の多様性が存在することも知って頂きたいです。」
音声「続いて、ポリアモリーについてです。ポリアモリーとは関係性指向のひとつになります。関係者全員の合意のうえで、複数のパートナー同士が親密な恋愛関係を結ぶというライフスタイルです。全員の合意がある点において、浮気または不倫とは異なります。
対義語はモノガミー、1対1で恋愛関係を結ぶ関係性指向のことです。
ポリアモリーもセクシャルマイノリティとは少し異なりますが、LGBTQの中にもポリアモリーを実践している人もおります。」
音声「「DSDs」と「ポリアモリー」について詳しく知りたい場合は、下記のサイト、または、団体様の方、ぜひご活用なさって下さい。」
音声「これまでのお話で、L/G/B/Tに含まれないセクシャリティも存在していること、
LGBTQのような性自認、恋愛/性的指向の多様性だけではなく、体や関係性指向にも多様性が存在していることを知っていただけたらと思います。」
音声「まず、「恋愛指向」と「性的指向」についてお話をさせていただきます。
こちらで使う指向という言葉、指が向くと書いて、自然と指が向く方などという意味で使われております。
恋愛指向は、恋愛感情を抱く性別などを表す言葉として使っております。
性的指向は、性的に惹かれる性別などを表す言葉として使っております。
恋愛指向と性的指向が必ずしも一致しないということをまずは知って頂きたいです。
例えば、恋愛指向は男性女性どちらにも向くが、性的指向は女性のみという性的指向と恋愛指向が一致しないという方もいらっしゃいますし、
または、片方はあるがどちらかがない、または、どちらもないというセクシャリティも存在しております。
この恋愛指向、性的指向が必ずしも同じ性別に向くとは限らないということや、どちらも必ずしもみんながもっているものではない、同じものでなく別々のものであるということ、この2つを切り離して考えることは、LGBTQの多様性を理解する上でとても重要なものであると言えます。」
音声「続いて、「アロマンティック/アセクシュアル」についてお話させていただきます。
こちらの表における横側の表記、他社に性的に惹かれる・惹かれないというところです。
他者に性的に惹かれるとは、他者に性的な魅力を感じ、かつその人と性的な行為をしたいと思うことを他者に性的に惹かれることと定義しております。他者に性的に惹かれない人をアセクシュアルと定義しております。
また、縦の他者に恋愛感情を抱く、抱かないの部分についてです。他者に恋愛感情を抱かない人をアロマンティックと定義しております。
そして、他者に性的に惹かれない、恋愛感情も抱かない人をアロマンティック・アセクシュアルと呼びます。
他者に恋愛感情を抱く、性的に惹かれない人を、ロマンティック・アセクシュアルといいます。日本ではノンセクシュアルという言葉で表されることが多いです。
他者に恋愛感情は抱かない、他者に性的には惹かれる人をアロマンティック・セクシュアルといいます。」
音声「続いて、Aro/Ace(アロエース)についてお話させていただきます。
先ほど説明させていただきました、他者に恋愛感情を抱かないアロマンティックと周辺にあるいくつかのセクシャリティを合わせて、Aro
他者に性的に惹かれないアセクシュアルとその他周辺のセクシャリティを合わせて、Ace
これらを「Aro/Ace(アロエース)」と総称しております。
その中でも「アセクシュアル/アロマンティック周辺のセクシャリティ」というものには、
・信頼関係がある相手にのみ惹かれる「デミロマンティク/デミセクシュアル」
・また、自分が恋愛的・性的に相手に惹かれはするが、同じ感情を返して欲しいと思わない「リスロマンティック/リスセクシュアル」
・そして、恋愛的もしくは性的に惹かれることと惹かれないことの間にある「グレイロマンティク/グレイセクシュアル」
…など様々なセクシャリティが存在しております。」
音声「続いて、Aro/Aceの多様性についてお話させて頂きます。
こちらの表は、先ほどもありました、アロマンティック/アセクシュアル・スペクトラム調査2020という調査の中での一部質問の回答になります。
結婚・同性婚などの法律婚を望みますか。過去に恋人関係になった人は何人いますか。
そして、自分に“性欲”があると思いますか、こちらの質問はアセクシュアル自認を選択した人の回答のみを抜き出しております。
Aro/Aceという1つのコミュニティの中にも、交際経験があるないだったり、結婚を望む望まない、性欲があるないと感じるなど、様々な人が存在しており、Aro/Aceとはこういうものだと一概には簡単にはくくれない、ということが分かると思います。
Aro/Aceという1つのコミュニティの中でも。考え方、ライフスタイルなど多様であり、
アセクシュアルという1つのセクシャリティの中でも、その状態・状況などは人により様々であるということが分かると思います。」
音声「現在、LGBTQコミュニティや団体などは多く存在していますが、そういった場所でも自分に「居場所がない」と感じる当事者もいらっしゃいます。当団体に届いた意見を一部ご紹介させていただきます。
LGBTQコミュニティにおいて、恋愛/性的に惹かれることが前提であり、そうではない自分は肩身の狭い思いをした
セクシャルマイノリティに関するイベント会場でのアンケートに選択肢が、L/G/B/Tの4つしかなかった
LGBTに関する交流会に行った際に、「どうせ異性を選ぶんでしょ」と言われてしまい、バイセクシャルの自分の居場所がないと感じた
また、レインボーパレードの最中に他の参加者から「恋愛できないなんてかわいそう」と言われた
自分がセクシュアルマイノリティ当事者であるとはっきりと自認していないので、自分が参加しても良いのか、参加したくても躊躇ってしまう
自分が2つのセクシャリティを自認していることを想定されていないため少し悲しい思いをした
など、一部の意見にはなりますが、こうした意見を持つ当事者の方もいるということを知っていただけたらと思います。」
音声「では、全てのLGBTQ当事者の方が居心地が良いと思える場所になるため、
LGBTQコミュニティに望むことというお話をさせて頂きます。
様々なセクシャリティや、同じセクシャリティの中にも多様性が存在することを知っていただきたいです。
恋愛指向と性的指向を切り離したものとして考えている人もいる、ということを知っていただきたいです。
また、「もしかしたら自分はそうかも?」と思う人や「とりあえず話を聞いてみたい」と思う人でも、アクセスしやすい場所であってほしい
また、全てのセクシャルマイノリティの方が参加しやすく、否定されない場であってほしいということを願います。」
音声「LGBTQコミュニティに求められる多様性とは
なるべく多くの当事者の意見を聞き、できる範囲で取り入れること
そして「レインボー」という1つの単色ではなく一人一人に色があるという認識を持つことそれらを常に忘れず、否定しないことが多様性であると思います。」
音声「もちろんLGBTQの全てのことを知り、理解したり、配慮したりというのは難しいと思いますが、それでも「LGBTQ」コミュニティであるならば、なるべく多くの人が参加しやすく、
否定されない場所であってほしいと願います。」
音声「最後ににじいろ学校から皆様へ伝えたいこと、お話させて頂きます。」
音声「お伝えしたいこと
まず、1つ目です。セクシャリティを「自認する」というのは個人の自由であるということです。
そのセクシャリティを自認することで自分が楽になったり、今抱えている苦しみが少しでも軽減されたりするなら、そのセクシャリティのラベルを選択するのは個人の自由であるということです。
「今、このとき」そうだと感じるなら、その自認を選ぶこと、また選ばないことも自由。のちのちに違うと思ったら、またそのときにラベルを選択し直せば良いと、私たちにじいろ学校は考えます。
ただ、治療を行う場合、意図しない場で流布されてしまう危険がある等の場合には、慎重になることもまた1つ必要になってくると思います。」
音声「続いて、LGBTQコミュニティに属すること、サービスや制度を利用することも個人の自由であるということです。
現在、多くのLGBTQ向け団体・コミュニティやサービス、制度などが存在しております。
それらを利用することや、コミュニティに属することなども全て個人の自由であると思います。
もし興味があったら、もしくは助けを必要としているなら、ぜひ自分に合うものを探してみてください。ただ、LGBTQ当事者であるなら必ずしも、コミュニティに属したり利用しなくてはならないというものでもないと思います。
そして最後に、自分以外のセクシャリティ、それに基づく考えや価値観を「否定をしない」ということです。
繰り返しお話ししたように、多様なセクシャリティが存在し、人によって考え方や望むライフスタイルというものは異なります。
もし自分の考え、価値観と違っても、相手には相手の生き方があります。「否定しないこと」を心に留め置いてください。」
「もっと知りたい方へ」
音声「今回、こちらご覧いただき、もっとLGBTQやセクシャルマイノリティについてもっと知りたい方へおすすめの書籍をご紹介させていただきます。『13歳から知っておきたいLGBT+』という本になります。
グラフやイラストを使って恋愛、性的指向やジェンダーのスペクトラムについてわかりやすく解説している書籍になります。
セクシャルマイノリティ当事者の話も多く掲載されておりますので、ぜひ興味がある方はご覧下さい。」
「こちらは今回、資料を作るにあたり、参考にさせて頂いた調査や書籍となります。
どれも詳しく解説されているものになりますので、ぜひ、こちらも合わせてご覧下さい。
こちらの一番下のAro/Ace調査2020というものでは、5月5日にAro/Aceを調査する方法とその意味というオンラインパネルディスカッションを開催させていただきます。Aro/Aceについて詳しく知りたいという方は、こちらぜひご覧下さい。
詳細は東京レインボープライドのレインボーウィークのページに紹介してありますので、ご確認下さい。」
「ここまでご清聴いただきありがとうございます。
にじいろ学校は現在6年目でして、団体としてはまだまだなところがあり、また私自身、このように大勢の方に向けてお話するという機会があまりなく、なかなか慣れていないということもあり、聞きづらい部分もあったかと思います。
また今回の動画でここがひっかかるなというものや、こんな話も聞きたかったというご意見ご感想などあると思いますので、もしございましたら、ぜひにじいろ学校のホームページのお問い合わせから送って下さると幸いです。
今回20分という短い時間でLGBTQの多様性というお話を全て伝えきれるとは思っておりませんし、また、これはあくまで一団体の目線、意見に過ぎないものになっております。
ですが、この銅動画をきっかけに、もしかしたら自分はこれかなだったり、ここはもっと知ってみないと思ってもらえるような入り口にようになっていただけたらとても嬉しいです以上で今回のお話は終わりです。
最後までお聞きいただきありがとうございました。それでは、にじいろ学校でした。」